近年、データの利活用は、企業の競争力を左右する重要な要素となっています。
ビジネスにおけるデジタル化が進む中、効率的にデータを処理し、分析に役立てるための手法として注目されているのがELT(Extract, Load, Transform)です。
本記事では、従来のETLとの違い、ELTの特長や活用例などをわかりやすく解説します。
ELT(Extract, Load, Transform)は、データ処理のアーキテクチャパターンの一つで、データを抽出(Extract)→ロード(Load)→変換(Transform)する処理を表します。データ処理の効率化に加え、分析の柔軟性やスピードを大幅に向上させることが、ELTの大きな強みです。
ELT | ETL | |
❶ 処理場所 | DWH(データウェアハウス) | ETLツールや中間サーバー |
❷ 変換タイミング | ロード後(後で変換) | ロード前(事前変換) |
❸ 柔軟性 | ローデータを保存し自由に変換可能 | 事前定義したデータのみ処理 |
❹ 主な用途 | ビッグデータ、クラウド分析 | 伝統的なデータ統合 |
今回解説しているELTは、データを抽出してロードし、その後に変換を行う方式のため、データ変換はDWH(データウェアハウス)などを活用しています。
一方ETLは、データを抽出し、変換をしてからロードする方式のため、データ変換はETLツールや専用のサーバーで実行されます。
ELTの主な特長として、次のようなものがあります。
❶ 高速処理 ❷ データの保存が柔軟 ❸ シンプルなデータパイプライン |
❶ マーケティング分析
【活用事例】広告業界 (E)広告データ(Google Ads、Facebook Ads)やWebアクセスログ(Google Analytics)を抽出 (L)データをDWH(BigQuery, Snowflake)にロード (T)SQLでユーザー行動分析や広告効果の最適化を実施 ✅主なメリット
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❷ 需要予測とサプライチェーン最適化
【活用事例】自動車業界 (E)過去の販売データや市場動向・経済指標・季節要因などのデータを抽出 (L)データをDWH(BigQuery, Snowflake)にロードし、各データを統合 (T)SQLで「地域別の売れ筋」「過去の販売トレンド」を計算 ML(機械学習): 需要予測モデル(時系列分析, LSTM)を適用 ※LSTMは、時間の経過とともに変化するデータ(時系列データ)を扱うためのニューラルネットワークの一種です。従来の手法では難しかった長期間の依存関係を捉えることができるため、需要予測や株価予測などに広く利用されています。 ✅主なメリット
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☑ dbt™とは?(data build tool)
【活用事例】医療業界 (E) 電子カルテ、バイタルデータ、処方データを抽出 (L) データをDWH(BigQuery, Snowflakeなど)にロードし、各データを統合 (T) 患者の健康状態をスコア化:dbtでリスクスコアを算出 ※リスクスコアは、患者が将来的に抱える可能性のある健康リスク(入院、重症化、慢性疾患の悪化など)を、数値として可視化した指標です。 BIツール:リアルタイムダッシュボードの作成:病院の管理者が簡単に患者の状況を把握 ✅成果
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dbt™のメリット
dbtは、小売、医療、製造業などのさまざまな業界で活用されているツールであり、データ分析や機械学習の精度向上に貢献します。またSQLを活用してDWH内(Snowflakeなど)で変換処理を行うことで、パフォーマンスとスケーラビリティを向上させ、データドリブンな意思決定を加速させます。
※dbtはオープンソースとしても提供されており、無料で始められる点も魅力の一つです。
ETLとの比較
従来のETLと比較して、dbtはDWHの強力な処理能力を最大限に活かし、変換にかかるコストを削減しながら、高速でスケーラブルなデータ変換を実現します。
さらに、従来のETLツールがGUIや独自スクリプトで変換処理を行うことが多いのに対し、dbtはSQLをベースにデータ変換を行うため、データエンジニアだけでなく、データアナリストやBIチームでも活用しやすいのが大きなメリットです。
本記事では、ELT(Extract, Load, Transform)の基礎から活用事例までを解説しました。
従来のETLではデータ処理に時間がかかり、柔軟な分析が難しいという課題がありました。しかしELTでは、クラウドDWHのパワーを活用して、大量データをスムーズに処理し、分析の柔軟性を向上させることが可能になりました。「データ処理の高速化」や「柔軟な分析環境の整備」を検討中の企業にとって、ELTの導入は、ビジネスの成長を加速させる重要なカギとなるでしょう。