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BIツール徹底比較!第3回 SisenseとQlik

執筆者 Turtle 更新日時 2020年10月22日

BIツール徹底比較!第3回 SisenseとQlik

目次

Tableauの日本市場参入の2年前、2010年にQlikの日本法人が設立されており、日本市場におけるインメモリBIの先駆者的な存在だ。
 
初めてインメモリBIのパワーを体験した時、これまでのDWHを利用した伝統的なBIの時代は終わると確信した。
 
2010年当時はまだまだBusiness Objects, Cognos, Oracle, Micro Storategyなどが元気ではあったものの、データベースの性能は現在ほど高くなかったこともあり、Qlikが4GBメモリのPCで楽々と数百万件のデータを扱えるのは驚異的であった。
 

1. Qlikとは

1-1. 連想技術を用いた探索型分析

2010年に日本市場に参入したQlikViewの特長は連想技術(Qlik Associative Engine)と呼ばれる、データ圧縮とインデックスライクに大量データを結合し、リレーショナルにデータモデリングできる技術にある。
 
Qlikで作成されたアプリ内で絞り込みが行われると、全てのシート(ダッシュボード)で絞り込みが実行されるため、シートをまたがって探索型で分析ができる。この探索をBusiness Discoveryと呼び、この手法に慣れてしまったユーザはなかなか他のBI製品に移ることは難しいと思う。
 
データモデリングはQlik独自のスクリプト(SQLとVBSが合体したようなもの)で行われ、Tableauのような制限もなく、コーディングを苦にしなければETLツール並みに便利だし、データロードもインメモリ製品の中では(おそらく)最も速い。
 
何より複雑なデータモデルが組める点ではTableauに勝ち目はない。
ただし、Qlikの独自言語であるスクリプトを自由に操れての話である。
 

1-2. UI / UX

QlikViewはかなり細かなダッシュボードデザインができる。一方、デフォルト設定はとても地味だし、デフォルトのまま作成するとかなりのレガシー感がある。デフォルト設定でのビジュアルの美しさを比較したらTableauに軍配が上がる。
 
もちろん、QlikViewを熟知したデザインセンスのある人が作成すればTableauを上回る表現が可能だし、ボタンに様々なアクションを組み込んで、アプリケーションのような動きさえできる。
 
また数式はSET分析と呼ばれるクエリ式を組み込むことができ、かなり複雑な集計が可能で、これもまた熟知している人が作成すると数式レベルで高度な集計が可能であるという点では他のBI製品の追従を許さない。
 
しかし、あくまでQlikの作法を熟知している人が作ればーということだ。
 

1-3. Qlik Senseへの世代交代

2015年、QlikはQlik Senseを市場に投入、マルチプロダクト戦略に出た。
QlikViewは、.NETFRAMEWORK上で動作する純粋なWindowsアプリケーションであったが、Qlik SenseはChromium上で動作するWebテクノロジーを駆使した全く異なる製品だった。
 
QlikViewを高度に利用しているユーザは、Qlik Senseで同等の機能を実現できることを期待したが、特にUI/UX面では当時最大のライバルだったTableauには全く及ばなかったこともあり、Qlikファンの中にはこれで見切りをつけたユーザも多いと思う。
 
ただ、Qlik社はMicrosoft依存のソフトウェアからの転換を余儀なくされていたのだと思う。
 
Webベースの製品となることで、よりオープンな環境への対応が可能となった。Javascriptベースでの拡張機能の開発、OSSとして配布されているチャートライブラリの利用、Python/R連携、REST APIによるデータ連携機能、そしてAI Drivenな機能拡張を自社の技術に依存せずして実現しやすくなるメリットは大きい。

2010年代の中盤、より深いアナリティックBIへ舵を取るには、ユーザ離れという代償を払ってでも大きな転換を図る必要があったのだ。
 

1-4. Qlikのビッグデータ対応

インメモリBIはこれまで数千万件レベルまでのデータを手軽に扱える点では「データの民主化」に寄与した功績は大きい。
SMBマーケットならこれで十分かもしれない。
しかし中堅企業以上となると億単位以上のデータボリュームが当たり前になっている現在、インメモリの限界が見えてきた。
 
他のBI製品がライブ接続をサポートしている(もしくはLookerのようにライブのみの製品もある)中、Qlikはライブ接続をサポートできないことで数億件以上のデータボリュームのニーズには苦戦を強いられている。
 
Tableauの解説でも述べたことだが、ライブコネクタをSQL変換器と考えると、独自アーキテクチャーに依存しているのQlikでの変換はそう簡単ではない。
 
つまり、SET分析のように何でもできてしまうクエリ言語に依存している以上は一定の制限を設けない限り実現は困難だろう。
 
そこでQlikは別の道を選んだ。
 
優れたデータベースレプリケーション技術を持つAttunityを買収し、データベースからDWHにリアルタイムにレプリケーションを行い、一定の絞り込みを行ったらデータをロードしてアプリケーションを生成する方法(ODAG/Dynamic Views)を取っている。
 
 

2. Sisenseとの比較

2-1. データモデリングはTableau以上だが独自スクリプト

前出のTableauの泣き所は、複雑なデータモデルではパフォーマンスが出ないためにデータマートに依存せざるを得ないことであった。
 
それに対し、Sisense、QlikはETLライクな機能を備えており、比較的複雑なリレーショナルなデータモデルでもパフォーマンスが維持できる点で優れている。
 
Qlik SenseにおいてはQlikView互換のロードスクリプトの機能を継承し、移行の面での障壁は少ない。
ただ、Qlikは独自のスクリプトを覚える必要があり、初めて触る人にとってはいささかハードルが高いと思う。

一方、SisenseはSQLベースであるために、非常に標準的な技術でデータモデリングを実現している点で学習にかかる時間を大幅に短縮できる。
 
データモデリングの柔軟性という点では、Qlikはスクリプト内でLOOP処理なども可能で、覚えてしまえばSisense以上に使い勝手があるが、これもまた言語依存の問題がある。
 
ビッグデータへの対応については、データボリュームが数億件であればSisenseのElastiCubeにまさるものはないし、それを超える場合はQlikでは実現不可能なライブ接続が可能だから、Sisenseに分があると言っていいだろう。
 

2-2. 標準機能でのUI / UXデザインの限界

UI/UX面ではQlikViewの緻密さには及ばないが、Qlik SenseもSisenseも、Webテクノロジーを採用している点では共通しており、標準機能でほぼ同程度の可視化が可能だ。
 
ただQlik Senseにおいてはダッシュボードのカスタマイズに関して明確な手法が提示されていないため、優れたQlikのパートナーに出会わない限り、限られた標準機能のデザインの壁を突破することは難しい。
 
Sisenseにおいては、JavaScriptやCSSを用いて、ダッシュボードやウィジェット(チャート)の表現を自由にカスタマイズが可能だし、BloXを使えば、さらに見栄えのするダッシュボードの開発が可能で、利用者に優しくスタイリッシュなダッシュボードを標準的な技術だけで開発することができるのは魅力的だ。
 

2-3. 組み込み機能

Qlik Senseにおける組み込みは体系だった手法が確立していないため、Qlikを使った組み込みを行うには高度なWebアプリケーション開発の技術習得が必要になる。
 
一方、SisenseはEmbed SDK, iFrame, Sisense JSという3つの手法が体系立てられており、これらをマスターすることでWebサイトへの組み込み(またはWebサイト風のデザイン)が可能だ。
 
通常のWebアプリケーションでパフォーマンスが得られないくらいのビッグデータを利用して対外的なサービスを行うような場合はBI基盤を用いてWebアプリケーション風のデザインが可能なSisenseのほうが向いている。
 
特にSisense Embedded Playgoundでは、簡単に組み込み機能を体験でき、より身近に組み込みの実現を感じさせる。
 

3.まとめ

QlikはQlikViewの独自路線から脱して、よりオープンな環境に移行してきた。しかし、スクリプトやSET分析などQlik独自文化も合わせて踏襲しているために、SQL, JacvaScript, CSSなどの標準的な技術で実現されているSisenseに比べると、新たに覚えることも多く、開発者の負担も大きい。
 
また数千万件レベルのデータなら探索型のデータ分析は強力であり、この連想技術に慣れた人はなかなかQlikから離れることはできないが、億単位のデータに対応する効果的なソリューションが現段階では見当たらないため、 Qlikを熟知したベンダーに協力を仰がない限り、限界を感じてしまう企業も多いだろう。
 
データが多くても常に一定のレスポンスが要求されるエンタープライズ・ダッシュボードなどを作成するのであれば、数億件までならElastiCube、それ以上ならライブ接続が利用できるSisenseを選択したほうが安定したパフォーマンスが保証されるはずだ。
 
独自文化か標準か、そしてスモールデータかビッグデータか...それが選択の分かれ道になるだろう。

■「Sisenseのココがすごい!Tabelau,Power BI, Qlik Looker... BI製品徹底比較」メインページ

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