CI/CDとはDevOpsとの関係について解説

１．はじめに：なぜこの知識が必要なのか？

現代のビジネス環境において、ソフトウェアは企業の成長を支える中核になっています。しかし、開発現場では以下のような課題がしばしば発生します。　

• リリースの遅延：開発、テスト、デプロイの各工程に手作業が多く、時間がかかりすぎてしまう。
• 品質の不安定化： 複数の開発者が書いたコードをまとめて統合する際に、大規模なエラーが発覚し、修正に多大な労力を費やしてしまう。
• 開発と運用の対立： 開発チームは「早くリリースしたい」と考え、運用チームは「システムの安定性を維持したい」と考えるため、協力関係を築くのが難しい。

これらの課題を解決して、より早く、より高品質なソフトウェアを、安定的にユーザーに提供し続けることが、ビジネスの成功には不可欠になります。

本記事の目的

本記事では、この現代の課題を乗り越えるための重要な手法であるCI/CD (Continuous Integration/Continuous Delivery)と、その基盤となるDevOpsという考え方について、初めて用語を聞く方にもわかりやすく解説します。

２．CI/CDとは何か？

概念の概要

CI/CDとは、ソフトウェア開発におけるビルド、テスト、リリースのプロセスを可能な限り自動化し、「継続的」に行うことで、より迅速かつ安定したソフトウェアの提供を目指す手法です。

開発サイクルを短縮し、開発者が本来の価値創造に集中できる環境を作るための基盤技術です。

CI (Continuous Integration: 継続的インテグレーション)

• 定義：開発チームのメンバーが各自のコード変更を共有リポジトリに反映(またはPull Requestとして提出)し、その都度自動でビルドとテストを実行するプラクティスです。
• 目的：個々のコード変更がほかの部分に与える悪影響(バグや互換性の問題) を、早期の段階で自動的に検出し、修正を容易にすることです。
• フロー：
  1. 開発者が変更をリポジトリ(GitHubなど) にコミットします。
  2. CIツールが変更を検知し、自動的にプロジェクト全体をビルド(コンパイルなど) します。
  3. ビルドされたソフトウェアに対して、単体テストや統合テストなどの自動テストを実行します。
  4. テスト結果が開発者にフィードバックされ、問題があれば即座に修正されます。

CD (Continuous Delivery/Deployment: 継続的デリバリー/デプロイメント)

CIによって品質が保証されたコードを、その次の工程である「リリース」に繋げるのがCDです(本番環境だけでなく、検証・ステージング環境を含む場合もあります)。

• Continuous Delivery (継続的デリバリー)：

  • CIでビルド・テストされたコードを、いつでも本番環境にリリースできる状態まで自動化するプロセスを指します。

  • 本番環境へのデプロイ自体は、経営判断やマーケティング戦略などに基づいて手動で行われることが一般的です。

• Continuous Deployment (継続的デプロイメント)：

  • 継続的デリバリーの自動化をさらに一歩進め、テストが成功したコードを人間の介入なしに完全に自動で本番環境へデプロイする手法です。

  • これを実現するには、テストの網羅性や品質保証に対する高い信頼性が求められます。

CI/CDパイプラインの全体像

この図は、CI/CDが実現する自動化された「パイプライン」を示しています

1. 　コミット(コードの変更)：開発者がコードをGitHubなどのリポジトリにコミットするところから始まります。
2. CI/CDツール（テスト・ビルド・デプロイ）： コミットをトリガーとして、CI/CDツールが自動的に「テスト」「ビルド」「デプロイ」を実行します。

3. フィードバックと本番環境への配備：

   • テストの結果は、開発者へ即座に通知されます。これにより、問題の早期発見・修正が可能になります。

   • すべての工程をクリアしたコードは、最終的に本番環境へ配備され、ユーザーが利用できるようになります。

この一連の流れを自動化することで、安全かつ迅速にソフトウェアをリリースすることが可能になります。

３．DevOpsとは何か？

概念の概要

DevOpsは、開発チーム(Development)と運用チーム(Operations)が連携・協力し、連携を阻害する壁を取り払い、ソフトウェアの開発からリリース、運用までのプロセス全体を継続的に改善していこうという文化、哲学、および一連のプラクティス(実践手法)  のことです。

DevOpsは特定のツールや技術を指すものではなく、人、プロセス、ツールが一体となって、ユーザーに価値を届けるスピードと品質を最大化するための考え方そのものです。

DevOpsを構成する要素

DevOpsは、単なる自動化ではなく、組織全体の変革を目指すものであり、主に以下の要素で構成されます。

• 文化 (Culture)： チーム間の協力、信頼、失敗を恐れずに学習し合う環境を構築します。

• 自動化 (Automation)： 手作業によるヒューマンエラーを減らし、スピードと効率を高めるために、可能な限りのプロセスを自動化します（CI/CDパイプラインはその核となります）。

• リーン (Lean)： プロセスから無駄を排除し、価値が顧客に届くまでの流れ（リードタイム）を短縮します。

• 測定 (Measurement)： 開発のスピード、システムの安定性、顧客の満足度など、成果を客観的なデータで測定し、改善の基礎とします。

• 共有 (Sharing)： 知識、ツール、成功体験、失敗体験をオープンに共有し、チーム全体の学習を促進します。

DevOpsのライフサイクル

この図は、DevOpsのプロセスが無限に繰り返されるサイクルであることを示しており、しばしば「インフィニティ・ループ」と呼ばれます。

このループは、以下の8つのフェーズから構成され、ソフトウェアの改善が一度きりのイベントではなく、継続的なプロセスであることを表しています。

1. Plan (計画)： 開発する機能や要件を計画します。

2. Code (コード)： 開発者が実際にコードを記述します。

3. Build (ビルド)： コードをコンパイルし、実行可能な形に変換します。

4. Test (テスト)： ビルドされたソフトウェアの品質を自動でチェックします。

5. Release (リリース)： テストを通過したソフトウェアを公開の準備に入れます。

6. Deploy (デプロイ)： ソフトウェアを本番環境に配備します。

7. Operate (運用)： 本番環境でシステムを安定稼働させます。

Monitor (監視)： システムのパフォーマンスやユーザーの利用状況を監視し、改善点を見つけ、再び「計画」フェーズに戻ります。

先ほど解説したDevOpsのインフィニティ・ループの中で、CI/CDは主に以下のフェーズを自動化し、ループ全体の回転を加速させます。

• CI (継続的インテグレーション)： 「Code」「Build」「Test」の各フェーズを自動化します。コードが頻繁に統合され、品質チェックされることで、DevOpsの初期サイクルが安定します。

• CD (継続的デリバリー/デプロイメント)： 「Release」「Deploy」の各フェーズを自動化し、テスト済みの変更を迅速かつ安全に顧客へ届けることを可能にします。

５．まとめと次のステップ

本記事では、現代のソフトウェア開発において不可欠な2つの重要な概念を学びました。

CI/CDとDevOpsの重要性

CI/CDとDevOpsを導入することは、単なる技術的な改善にとどまらず、ビジネス全体に以下のような効果をもたらします。

• 市場への迅速な対応：新機能や修正プログラムを数週間、数か月単位ではなく、数日、あるいは数時間でリリースできるようになります。
• 高品質の維持：自動テストと継続的なフィードバックにより、本番環境での障害発生リスクを低減することができます。
• チームの生産性向上：煩雑な手作業が自動化され、開発はより創造的な作業に集中できるようになります。

次のステップ

CI/CDとDevOpsの概念を理解したところで、実際にあなたのチームでこれらの概念をどのように活用できるかを考えることが重要です。

• 具体的なツールを調べる： 実際にCI/CDパイプラインを構築するために使われる具体的なツール（例：GitLab CI/CD、Jenkins、GitHub Actions、CircleCIなど）について調べてみましょう。

• 現状のボトルネックを特定する： 今のあなたの開発プロセスで、手作業が多く時間のかかっている工程や、チーム間の連携がうまくいっていない部分を見つけてみましょう。それがDevOps/CI/CD導入の第一歩となります。

結び

この記事を通じて、CI/CDとDevOpsが現代のソフトウェア開発のスピードと品質を支える土台であることを理解いただけたなら幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。