「IoT(アイ・オー・ティー)」とは「Internet of Things」=「モノのインターネット」と呼ばれるものです。電子機器はもちろん、これまではオフラインで使われていた様々なモノにネットワークをつなぎ、そこから情報収集をすることで顧客体験の向上を目指します。
ベッドを例に挙げてみましょう。
これまでのベッドには「寝る」という機能しかありませんでした。現在IoT機能を取り入れたベッドは非常に進歩しており、寝返りや心拍数、体温などの生体情報を検知します。そして硬さやリクライニング角度の変化など、その人に合った最も適切な睡眠をサポートしてくれます。
このようなIoTを取り入れた製品は現在無数にあり、これからもその市場はまだまだ拡大していくと見られています。
IoTエンジニアとは、IoT製品やシステムを開発するエンジニアのことです。
IT人材が2030年には約80万人不足すると考えられているため、IoTエンジニアは今後需要が拡大する職種の1つだと言えるでしょう。
業務範囲の広いIoTエンジニアは、1つの特化した専門性だけでは務まりません。フルスタックエンジニアと呼ばれ、1人で何役もこなす必要があり、非常に幅広い仕事内容となります。
IoTエンジニアは他のエンジニアと比べてもかなり幅広い知識とスキルが求められます。その内容は多岐にわたり、一朝一夕では習得できません。以下では必要な知識について解説します。
IoTデバイスは様々なネットワークに接続されています。有線ネットワークはもちろん、Wi-FiやBluetoothなど無線通信が主流になっています。
IoTエンジニアには、物理的なハードウェアに様々なセンサーや機能を取り付ける技術が求められます。センサー1つをとっても、人の動作を感知するもの、体温など温度を感知するもの、スピードを感知するもの、光を感知するものなど、多種多様です。ここでは幅広いハードウェア全般の知識が必要です。
IoTデバイスは必ずネットワークにつながっているため、強固なセキュリティ対策と継続的なアップデートは欠かせません。
収集された情報は可視化しやすく、扱いやすい形に加工されます。その際にタブレットやスマートフォン、パソコン上でアプリケーションを通して確認、操作されることが一般的です。
そのため情報を処理、加工する技術に加え、アプリケーション開発に関する知識が必要不可欠となります。
IoTデバイスを通して集められた膨大な情報の加工や処理は人の力だけでは難しく、AIにより行われます。AIにどういった作業や動作をさせるのか、要件定義が必要です。
様々なITに関する知識が求められるIoTエンジニアですが、スキルも非常に重要です。扱う範囲の広いIoTエンジニアにとって、1人ですべての仕事を完結することは不可能です。特に以下の2つのソフトスキルは欠かせません。
チームでプロジェクトを進めるIoTエンジニアにとって、コミュニケーション能力は不可欠です。
ハードウェアエンジニアや、営業担当、クライアントなど複数の関係者とコミュニケーションがとれることは円滑にプロジェクトを進める上で非常に重要です。関係者それぞれの知識レベルはバラバラなため、相手に合わせたコミュニケーション能力も必要になります。
変化の速い現代では、日々プロジェクトの進捗状況もめまぐるしく変わります。昨日まで上手くいっていたことが、今日は全く通じないといったことも珍しくありません。
そういった状況でも過去のやり方に固執せず、常に柔軟に新たな方法を模索し、適応できる柔軟性は非常に重要です。
今後さらに拡大していくであろうIoTエンジニアの市場価値。年収や将来性の高さは他の業種と比較してもやはり高いものになっています。
IoTエンジニアの気になる年収ですが、未経験可の案件を含めると300万円~1000万円と言われています。
平均年収は一般の会社員(全職種)が409万円。ITエンジニアは540万円ほどなので、IT業界の年収は平均以上であることが分かります。
近年は人気職種のエンジニアの中でも徐々に格差がでてきていると言われています。中でもIoTエンジニアの将来性は非常に高く、そのほか上位に入るのが「AIエンジニア」「クラウドエンジニア」です。
IT専門調査会社のIDC Japanの発表では、日本国内でのIoT市場が2020年は約6兆円。そして2025年には10兆円を超えると見られており、今後その市場が拡大していることが分かります。
現在、様々なレベルに合わせたIoT関連資格があります。現役エンジニア向けのものはもちろん、これからIoT導入を考える企業の担当者やビジネスパーソン向けの比較的難易度の低いものもあります。ここでは代表的な3つの資格をご紹介します。
IoT検定は、IoTやAI、ビッグデータなどの技術や、マーケットなどの知識やスキルが問われます。対象はエンジニアだけでなく、IoTに関わるすべての人になります。
システムの企画や運用、構築などに関する内容となっており、基礎検定はこれからIoTビジネスに関わるビジネスパーソン向けです。他には上級、中級とありレベルに合わせた受験が可能です。
エンベデッドシステムスペシャリスト試験では、高度IT人材として専門分野を持つ必要があるため幅広い知識が求められます。現状では、既存のIoTエンジニア向けの試験の中で最も難易度の高い試験だと言われています。
ご紹介してきたように、IoTエンジニアは実に多種多様な能力が求められます。
企業にとっては自社で採用しようとすると、それなりの報酬を支払う必要もあるでしょう。しかしIoTエンジニア1人を雇えばすべてが解決するわけではありません。
またIoT導入を本格的に考えている企業にとって、そんなIoTエンジニアのスキルや能力を最大限生かせるチーム作りも不可欠です。エンジニアは貴重な存在であることに違いありませんが、IoT開発はチームで行うものです。さらには、チームで解決できない課題に対しては外部委託先を探す必要もあります。
今後より重要性が高まるIoTエンジニアと協力することが、企業にとってはIoT製品を開発するために非常に重要なファクターとなるでしょう。