Excelのような表計算ソフトは個人で利用するには最強のツールではありますが、機能や能力に限界があります。また、もう1つの問題として、人間の恣意が入り込む余地があるという問題についてはあまり認識されていません。
表計算ソフトでデータ分析をしようとした場合、例えば「りんごが売れている」という分析結果が見えてきたときに、「ではりんごを買っているのはどんな顧客か」という絞り込みをするためには、データを再集計して別のシートにまとめる作業をする必要があります。
対して、BIツールを使うと、クリックひとつで「りんごを買っているのはどんな顧客か」に絞ったデータを見ることができます。
また、表計算ソフトで分析結果を可視化する際に、その時点で得られているデータを使って表やグラフを作ることになります。つまり答えが先にわかってしまっているのです。
この場合、分析結果を可視化する際に、色使いやグラフの選択、強調するポイントに意識的無意識的にかかわらず、データ作成者の意図が入り込んでしまいます。結果的に客観的な判断を狂わせてしまうことがあります。これも人間起因の問題です。
データ分析においては、可視化も客観的になされなければならないので、分析結果からさらに深堀りしたり必要に応じて視点を切り替え、自由に探索できるように設定しておく必要があります。
さらには、運用の面でも人間の問題が横たわります。多くの場合、表計算ソフトを高度に使っているのは、現場のパソコン好きな人です。私たちの業界には「エクセラー」と揶揄する言い方がありますが、個人で勉強して高度なテクニックを盛り込んで業務効率化に使っています。それ自体は、何も否定されるものではないのですが、その業務改善は個人に限定されたものになっていることに留意しなければなりません。
エクセラーが、マクロや関数を駆使し、グラフへのリンクや表現にも凝って作り込んだ表を作成したとしても、仕様書を書き残していることは、まずないでしょう。
するとどうなるか。その人が異動や退職したとき、引き継いだ人間にとってはブラックボックスとなった業務処理システムが手渡されることになり、それを改善したり、データを再構築するには膨大な手間を要することになるのです。高度に使われていたとしても、無駄や間違いもたくさんあります。これもまた部分最適が全体最適にならない典型的なあるあるです。